小梅物語タイトル画像
見出しタイトル 好奇心と無警戒

猫一家が出入りしているのは、ベランダに面した部屋のみであったのだが、その部屋から初めて抜け出たのは、行動派のハナクソではなく、実はしっぽであった。

ちょっとだけ開いていたドアの隙間から、そろ〜りと一人探検に出て行ってしまったのである。
その時夫婦はすぐに気がつくことができたので、そっと後をつけて、一時その様子を後ろから見ていた。

くんくんと匂いを嗅ぎながら、興味深そうにキョロキョロとゆっくり進む後ろ姿が何ともかわいいものであった。
台所を通り、短い廊下のお風呂とトイレの扉の横を通り過ぎ、玄関の方へゆっくりゆっくり。

初めて見る風景の中、しっぽの室内大冒険である。

こんな小さな身体から見ると、台所のテーブルはさぞかし巨大に見え、そびえ立つ扉に、玄関に並ぶ巨大な物体・・・靴。
しっぽにとってはどれも興味津々なものばかりなのであろう、何が見えてきても怖がるどころか、いつまでもウロウロしていそうな様子であった。

しかし、さすがにしっぽがウロウロし出したのを見たのか、他の子猫達もそれならばとゾロゾロと、というかチョロチョロといつもの部屋を抜け出てきてしまい、このままでは子猫4匹が家中あちこちに散らばって、収拾がつかなくなりそうなので、冒険はそこそこにしてもらい皆に退散していただいた。

それにしても、この時先陣を切ったしっぽは好奇心が旺盛なのか怖いもの知らずなのか。はたまた何も考えてないのか…、あまりの無警戒ぶりなのである。

やはりこんな調子では、今後が思いやられてしまう。

というのも、先日の柵の上を自由に昇り降りし始めている子猫達を見てから、夫婦も何となくではあるが、この猫一家との別れが近づいているのではないかという予感がし始めていたのである(あまり考えたくない事でもあったが)。

だから一層、このしっぽのおっとりさが気になり始めていたのかもしれない。
そう、成長が遅れているように体が一番小さく、動きも今だにどんくさく、皆について行けそうにない、そんな様子なのに警戒心がなく好奇心だけは旺盛なしっぽのことが…。

そして間もなく、この、どんくさくて、おっとりして、他の子猫達についていけるのか心配になっていた「しっぽ」の思いやられた「今後」が現実となってしまうことになるのである。

そう、その時はもうすぐだったのである…。


※本文と関連のある写真がなかったので、しっぽの写真を集めました。




つづく