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見出しタイトル 置いてきぼり

子猫達がベランダにいる方が少ない位に、頻繁に外へ出向くようになるのには、さして時間はかからなかった。
既に、ベランダにはたまに顔を出す程度といってよいだろう。

夢のような楽しい時間も、そろそろ終わりに近づいてきており、どうやら、本当に巣立ちの時期なのだと覚悟する夫婦であった。

ところがである。
夫婦は何か変だと気がついたのである。

外の世界へ巣立ち出した子猫達の中にあって、その姿を駐車場で見かけた事が一度もない子が一匹いるのである。
すぐには気がつかなかったのだが、どうやらその一匹だけが今だベランダから脱出できないでいるようで、いつ見てもベランダにいるのである。

そう、「しっぽ」である。

何故であろうか、トラちゃん、茶タロウ、ハナクソと、皆がベランダから外の世界へと飛び出し、その新たな広い世界で元気に走り回っているというのに、しっぽだけが、いつまでたってもベランダに留まり、時にはその走り回っている皆の様子をベランダからじ〜っと見つめているのである。

「どうしたの、しっぽ」
「みんなと一緒に行かないの?」

夫婦は皆が巣立つのを寂しく思いながらも、今だベランダから出る事のない、しっぽが気になって仕方がなくなってきた。
当然、しっぽが一人ぼっちでいる時間が多くなり、寂しそうに外の世界を見ているその様子がかわいそうにも見えてくるのである。

そうなのである。
一番成長が遅れていて、体が小さいしっぽは、どうやら、ベランダからの脱出ルートである、車の屋根へ飛び移る事が怖くて出来ないようなのである。
好奇心は強いしっぽなのだが…。

おっとりマイペースなしっぽ。
圧倒的にどんくさかったしっぽ。
ボーッとしていて、置いてきぼりにされる事もあったしっぽ。

皆についていけるのかと心配していた事が、ここで現実のこととなってしまったのである。
いったいどうすれば良いのだろうか。
しっぽは巣立つ事が出来るのであろうか…。

※本文と写真は特に関連はありません。


つづく