それは一瞬の出来事であった。
それは信じられない光景であった。
そして、その信じられない光景は、夫婦の目の前で起きたのであった。
久しぶりにやってきた母猫・小町が、自分の子供であるしっぽに向かって、何と「シャーーーー!」という威嚇の声を上げたのである。
母猫が子猫に対して威嚇をする…。
こんなことがあるのであろうか。いや、今それが現実に起こったのである。今ここで起こったのある。
威嚇されたしっぽはというと、一瞬、恐怖に固まってしまったように見えた。
それはそうであろう。久しぶりに母親に会うことができて、久しぶりに甘えることができると思ったに違いない、まさにその時にこんなことが起きてしまったのだから。
そしてすぐにしっぽは、あまりにかわいそうで、放っておけないくらいに、怯えてしまっていた。
小さな身体を更に小さくして、怯えているその小さな身体が、更には震えているようにも見える程であった。
突然の小町のその威嚇の声には、夫婦も驚き、動きも止まり、恐怖を感じる程であった。
もちろん、小町に近づくこともできず、しっぽに手を差し伸べることもできなかった。
この小町の行動はいったいどういうことなのであろうか。
小町が現れた時には、ひょっとして、しっぽを迎えにきたのでは、ということが頭をよぎったのは確かだが、どうやらその考えは完全に否定されてしまったようである。
少なくとも、この状況ではそれはありえない。
それならば、その逆?
つまり、小町はしっぽを見捨てることを伝えるために、わざわざここに戻ってきたということなのか…。
今、異様な緊張感がこの場を支配し、じっとして動かない小町としっぽの間には、相容れない空気が流れてしまっていた。
そして、小町はじっとしっぽを睨み続けていた。
※写真はイメージです。小町の写真は過去に掲載済みのものを再掲載しています。
![]() |
![]() |
| つづく |



