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見出しタイトル 本当に残された一匹

結局、これはどういうことなのか。

毋猫・小町が、自分の子供であるしっぽを突き放し、独り立ちさせるために、わざわざこの場所に戻ってきて、このような行動をとったとでも言うのか。

それはまるで、テレビで見る野生の動物の物語ではないか。

いや、確かに、小町はれっきとした、気高き野良猫なのであるから、野生の動物と言えるのかもしれない。
夫婦とともにベランダで過ごし、部屋の中で子猫たちと夫婦が遊ぶ様子を傍らで見守っていたとしても、決して完全には気を許すことがなかった、気高き野良猫なのである。

それとも母猫・小町は、この子猫・しっぽは野良としては生きて行くことはできないと、はっきりと伝えるため、そして見捨てることを伝えるために、このような行動をとったのか。
つまり、野良猫失格の烙印を押しにきたということなのか。

何故そのようなことを?

いつまでもベランダから脱出できないことが、いけなかったのだろうか。
あまりにも、人間の匂いが染み付いてしまったのであろうか。
どんくさくて、運動神経が悪くて、勇気のないしっぽは、野良としては生きて行けないと、判断されてしまったのであろうか…。

ぴんと張りつめたその状況はいったいどのくらい続いただろうか。
いや、一瞬のことであったかもしれない。
その一瞬の間に、色々なことが夫婦の頭を駆け巡っていたのである。

次の瞬間、じっとしっぽを睨みつけていた小町が、ふとその睨みつけていた視線を外した。

そして、もう母猫・小町と目も合わせられずに下を向いて怯えているしっぽをよそに、小町は用は済んだとばかりにその場を離れ、そして、悠々とベランダから外へと出て行き、そのまま去って行ってしまったのである。

呆然とそれを見送る夫婦と、ぽつんと佇むしっぽ。

小町はそれ以来、二度とベランダに姿を現すことはなかった。

そして、しっぽは本当に残された一匹となってしまったのである。

※本文と写真は特に関連はありません。
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つづく